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斜線のなかみ

圧倒的他者の小宇宙

先日、詩人の谷川俊太郎さんと歌人の穂村弘さんによるトークライブに行ってきた。作品の朗読だけでなく、お二人の飾らない対話にも楽しませてもらった。 その対話の中で谷川さんがこの日のイベントタイトルでもある『あなた』について言及したのが印象に残っ…

いのちの記憶

4月に、自身の妊娠が発覚した。 その時は妊娠6週目で、つわりは2週間前から始まっていた。翌日の出勤を最後にアルバイトの無期限休暇をもらい、その翌日からはほぼ寝たきりの生活を送った。 通院以外の用事で出掛けられるようになるまで約2ヶ月半かかっ…

共鳴の塔

『共鳴の塔』。10年以上前にそういうタイトルのファンタジーを書こうとしていたことを思い出した。砂漠と赤土ばかりの荒廃した大地。巨大な2つの塔が世界を支配していて、その秘密を探りにいく物語、という大枠しか考えていなかったけれど。その当時松本…

雪の降らない夜

石英という鉱物がある。透き通った六角柱状の結晶体。水晶とも呼ばれる、あの。私が初めて触れた時、それはとてもとても冷たくて、指先から体が浄化されてゆくような、胸に鋭い光が差し込むような、美しい感覚に捕らわれた。私はそれを持ち帰ってガラスの容…

春よ来い

もう1月も末だけど、お正月の話を。 2013年の大晦日は夫と二人で家でテレビを見て過ごした。結婚して初めての二人きりの年越しだった。頂き物のお酒たちをぐいぐい煽り紅白を見て騒いで過ごした。紅白が終わって番組がゆく年くる年に変わると夫は蕎麦を…

小さな火とアルコール

手足の感覚が無くなりそうなほど冷えきった体で、俺はウィスキーを煽った。それは一瞬だけ喉を灼き、尾を引きながら胃の腑へと落ちてゆく。香りつきの息を吐き出し酒瓶をコートのポケットに納めると今度は煙草に火をつける。マッチを擦るとその時だけ辺りが…

青いしっぽのゆくえ

光をちらちら反射するメタリックな青色のしっぽが、それ単体でくねくねと動いていた。僕がその様子をみるのは初めてで、この結果を望んだのは僕なのに、ひどく不安な気持ちになった。都会にありながらその公園は広大で緑が多く、幼少期に果たせなかったひと…

柔らかな森

目を開けて、目を閉じて、また目を開ける。開けていても閉じていてもさほど変わりはない。開けていれば白い闇が、閉じていれば黒い闇が広がっているだけだ。 私がなぜここに居るのかといえばそれは自身が望んだことだし、気分はさほど悪くない。吸い込む空気…

さえずらない生き方

取捨選択する。もう少し考える。流さない。流されない。 自分の考えをまとめたい。生活を記録したい。日記で良いはずなんだけど、どうしても人目に触れる場所にしか書けない。自分のためだけに書くのは自由すぎて途方に暮れてしまう。手書きは美しくできない…

人でなしの恋

どうやら私は「結ばれない(結ばれてはならない)恋」の物語が好きらしい。 とは言っても、身分の違う同士だとか親友の恋人が相手だとか、そういうのではなくもっとファンタジー寄りの。 吸血鬼、人魚、妖怪、アンドロイド、化狸、などなど。色々あるけれど…

ロックンロールじゃ踊れない

お湯を飲んでいる。 夕方からダラダラと無為に酒を飲むのをやめて、冷たい飲み物を避けるようにした。 必然的にビール発泡酒は飲まない。寝起きと寝る前はお湯を飲む。日中喉が渇いたら、お湯かお茶か紅茶を飲む。コーヒーは体が受け付けなくなって久しい。 …

シェルター

雨が降っている。窓を叩いている。季節外れで寝ぼけ顔の、巨大な台風が呼んでいる。 私は誘惑に抗うように、ガラガラと雨戸をしめた。そうするとなんだか温いような重みのある空気が耳から肩の辺りを覆った。私の部屋。閉ざされた空間。シェルター。 間接照…

さよならKENWOOD

CDコンポの購入を検討している。 私はわりと音楽が好きな人間だと思うのだけど、それなら何故コンポを持っていないのか。 4年ほど前、私は婚約者と同居するために当時1人暮らししていた部屋を引き払った。その頃の私は物を持つのが嫌で、嫌というよりなん…

石鹸で顔をあらう

マーガレットズロースの歌に「ぼくの彼女はいつも石鹸で顔を洗う」という歌詞がある。 変な石鹸で全部洗ってるのにどうしていいにおいがするんだろう、みたいな歌詞。 私は子供の頃から肌がきれいと言われてきて、それは特別肌に気を使わなくても言われてき…

都会の狐とタイムマシーン

奇妙な体験をふたつ。 数日前、バイトを終えて私は中野に向かっていた。正確には中野セントラルパークという場所に向かっていた。 <駅から徒歩3分。中野ブロードウェイに行く方の出口。だいたいの方角。> それだけを頭に入れて駅から歩き出した。多分大き…

アンクル・ニッカ

私はお酒が好きです。 ひんやりしたフローリングにぺたりと座って。二人掛けのソファで恋人にしなだれかかりながら。やかましい安居酒屋で下ネタを言い合いつつ。薄汚いライブハウスの爆音の中で。 思い出は色鮮やかにも霧に包まれたようにも、スローモーシ…

ライオンと魔女

昨日、友達から手作りの洋服を買った。 麻製で藍染めのワンピース。お店で買うよりも遥かにお手頃な価格ではあったけど、私は普段3、4千円の安服か数百円の古着ばかり着ているから、購入するには少しだけ勇気が必要だった。 友達の手作りであること。植物…

ゼライス

心がゼリーみたいになるときがある。 触れられるだけでぷるぷる震え、なんでもない言葉でも刺さってそこから崩れ出す。 そんな時はSNSが苦痛になる。twitterは最たるもので、次々に色んな人の言葉が流れてきて止めどない。 普段ならタイムラインは可愛い小川…