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斜線のなかみ

柔らかな森

目を開けて、目を閉じて、また目を開ける。開けていても閉じていてもさほど変わりはない。開けていれば白い闇が、閉じていれば黒い闇が広がっているだけだ。

私がなぜここに居るのかといえばそれは自身が望んだことだし、気分はさほど悪くない。吸い込む空気は湿っていて、その微小な水滴は髪の毛にまとわりつく。膝下で広がる白いシフォンワンピースが同じ色をした風景に溶けていきそうだった。私は胸元に垂れる毛先に指を絡めながら、この明るい霧の向こうをぼんやりと見つめている。私は私の現実を放棄して、夜じゅう走ってここへ来た。いばらの草原を駆け抜け氷の湖を渡り、手足には幾つもの傷口が歌っている。くたびれた体を横たえると腐葉土の甘くいやらしい香りが私を慰めてくれた。10センチ先も見えない白い闇の中へ手を伸ばすと、小動物のような柔らかく温かいものに触れた。私はなんとなく安心して身を丸め、再びゆっくりと目を閉じた。

 

即興小説トレーニング初挑戦。お題は「昼間の霧」制限時間15分。さすがに気に入らなかったので加筆修正した。2ヶ月ぶりの創作。早く復帰したい。