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斜線のなかみ

雪の降らない夜

石英という鉱物がある。透き通った六角柱状の結晶体。水晶とも呼ばれる、あの。私が初めて触れた時、それはとてもとても冷たくて、指先から体が浄化されてゆくような、胸に鋭い光が差し込むような、美しい感覚に捕らわれた。私はそれを持ち帰ってガラスの容器に飾った。それは今も部屋の片隅にひっそりと存在している。

冷たい雨の降る夜に出会ったひとは、まるで石英のようだった。濁りなく透き通って、硬く光りを反射する。私の胸にはひんやりとした感触が残った。帰り道、私は君に電話してそのひとのことを話した。私は君の声をききながら思う。「君も冷たい石のようだね。だけどその色は明るい緑色をしていると思う。エメラルドの原石のような。」

凍えた体で部屋に戻り、カーテンの隙間から窓の外を眺める。雨は止んで、その夜雪は降らなかった。

 

自力即興小説トレーニング。アラームセットしてタイトルを決めてからスタート。15分で書くってさっぱりしていて良い。