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斜線のなかみ

都会の狐とタイムマシーン

奇妙な体験をふたつ。

数日前、バイトを終えて私は中野に向かっていた。正確には中野セントラルパークという場所に向かっていた。

<駅から徒歩3分。中野ブロードウェイに行く方の出口。だいたいの方角。>

それだけを頭に入れて駅から歩き出した。多分大きな商業施設だろうし、駅から近いし中野には何度も来た事あるし、すぐに着けると思っていた。

余裕をかまして私はまずドラッグストアに入り、ソフトコンタクトの上からさせるドライアイ目薬を購入した。

その店は出入り口が2つあって、私はなんとなく、入ったのとは違う出口から外に出た。

そしてだいたいの方角へ歩き出した。路地にはいかがわしい感じのお店や客引きが居てゴミゴミしており、新宿に近い場所であることを思い起こさせた。

小さな飲み屋も充実していて、それらを眺めながら歩いていくと大通り沿いの商店街に出た。

ここで既視感が私を包む。「何かおかしい」そう思いつつも自分の信じた方角に歩みを進め、ふと顔を上げると目の前に中野駅があった。

黄色いラインの入った電車が停車している。総武線である。看板にはJR中野駅。私は目を疑った。さっき出て行ったはずの駅だった。

どうやら私は北口を出て路地に入り、いつの間にか南口にたどり着いていたらしかった。

ただ私が異常に迂闊で方向音痴なだけなのはわかっているんだけど、そびえ立つ中野駅があまりに衝撃的で、たぶん狐に化かされたらこんな感じなのではないかと思った。

 

もうひとつは、私のバイト先でのことで、仕事内容をイチから説明しないと伝わらないので割愛。

忙しすぎるため仕事を未来に回すことになって安心し、「おかげでちょっと気が楽になりましたよ〜」と言った直後にその未来が自分の出勤日だと気付いて絶望したという。

時間旅行モノによくありそうな、未来の自分に借金させるような話。