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斜線のなかみ

2014-01-01から1年間の記事一覧

圧倒的他者の小宇宙

先日、詩人の谷川俊太郎さんと歌人の穂村弘さんによるトークライブに行ってきた。作品の朗読だけでなく、お二人の飾らない対話にも楽しませてもらった。 その対話の中で谷川さんがこの日のイベントタイトルでもある『あなた』について言及したのが印象に残っ…

いのちの記憶

4月に、自身の妊娠が発覚した。 その時は妊娠6週目で、つわりは2週間前から始まっていた。翌日の出勤を最後にアルバイトの無期限休暇をもらい、その翌日からはほぼ寝たきりの生活を送った。 通院以外の用事で出掛けられるようになるまで約2ヶ月半かかっ…

共鳴の塔

『共鳴の塔』。10年以上前にそういうタイトルのファンタジーを書こうとしていたことを思い出した。砂漠と赤土ばかりの荒廃した大地。巨大な2つの塔が世界を支配していて、その秘密を探りにいく物語、という大枠しか考えていなかったけれど。その当時松本…

雪の降らない夜

石英という鉱物がある。透き通った六角柱状の結晶体。水晶とも呼ばれる、あの。私が初めて触れた時、それはとてもとても冷たくて、指先から体が浄化されてゆくような、胸に鋭い光が差し込むような、美しい感覚に捕らわれた。私はそれを持ち帰ってガラスの容…

春よ来い

もう1月も末だけど、お正月の話を。 2013年の大晦日は夫と二人で家でテレビを見て過ごした。結婚して初めての二人きりの年越しだった。頂き物のお酒たちをぐいぐい煽り紅白を見て騒いで過ごした。紅白が終わって番組がゆく年くる年に変わると夫は蕎麦を…

小さな火とアルコール

手足の感覚が無くなりそうなほど冷えきった体で、俺はウィスキーを煽った。それは一瞬だけ喉を灼き、尾を引きながら胃の腑へと落ちてゆく。香りつきの息を吐き出し酒瓶をコートのポケットに納めると今度は煙草に火をつける。マッチを擦るとその時だけ辺りが…

青いしっぽのゆくえ

光をちらちら反射するメタリックな青色のしっぽが、それ単体でくねくねと動いていた。僕がその様子をみるのは初めてで、この結果を望んだのは僕なのに、ひどく不安な気持ちになった。都会にありながらその公園は広大で緑が多く、幼少期に果たせなかったひと…

柔らかな森

目を開けて、目を閉じて、また目を開ける。開けていても閉じていてもさほど変わりはない。開けていれば白い闇が、閉じていれば黒い闇が広がっているだけだ。 私がなぜここに居るのかといえばそれは自身が望んだことだし、気分はさほど悪くない。吸い込む空気…