n n m

斜線のなかみ

人でなしの恋

どうやら私は「結ばれない(結ばれてはならない)恋」の物語が好きらしい。

とは言っても、身分の違う同士だとか親友の恋人が相手だとか、そういうのではなくもっとファンタジー寄りの。

吸血鬼、人魚、妖怪、アンドロイド、化狸、などなど。色々あるけれど人間ではないものとの恋に惹かれる。それは、「恋」とは何なのか。二人でどうなりたいのか。そういうことを真剣に考えるストーリーになることが多いからだと思う。私は人間に興味があって、人間が人間を好きになるということに興味がある。描かれるのが異形であっても、人間の描いた、どこかを特化させただけの人間だと思って見ている。異形のものの背負う運命や哀しみは、形が違うだけで人間の運命や哀しみなのだと思う。だから異形は恋以外でも人間を深く描くのに適したキャラクターなのだけど(そもそもファンタジーそのものが人間を深く描くためのメタファーであるべきだと思う)今回はそれは置いておいて。

 

まず「恋」と「恋愛」を私なりに定義をしてみる。

「恋」は相手をその他大勢より好きになること、自分が一番そばに居る存在になりたいと願うこと。

「恋愛」は両想いになってから結婚するまでのありきたりなプロセスのこと。

 

つまり「恋」は片思いである。相手を思うこと。それで完結。

人間と人間の関わりはその一つ一つがオリジナルで、名前をつけることなんて本当はできないのだけど、わかりやすいし方向性を定められるから「友達」とか「恋人」になるわけで。

普通の男女なら「恋」をしたとき次に望むのは「恋人」になること。それが社会の通念。動物としても、子孫を残すために惹かれた相手とつがいになるのは当然。

しかし。相手が人間じゃなかったら?タブーとされる存在だったら?

共同体の中での幸せを望めなくなる。身近な、親愛なる人々を失望させ状況によっては敵にすらなってしまう。(少なくとも純血の)子孫を残せなくなる。社会的な幸福と動物としての本能、それよりも優先される「恋」という強い思い。それは何なのか?彼、彼女の望みは何なのか?

私には人間の行動を動物と比較して考えるくせがあって、そうするとだいたいのことは納まりがつく。しかしその、動物的本能からどうしてもはみ出してしまう、理解不能な行動こそが人間らしさなんじゃないか?私はそれこそを愛おしいと思っているし、もっともっと知りたい。そして描きたいと思っている。

 

最初に異形の恋のことを書いたが、実は人間同士でだってその物語は起こりうる。同性の恋というやつだ。でもそれだって頭を使わない、異性との恋になぞらえるだけなら私の興味はそそられない。二人だけの関係性を見つめ、二人だけの在り方を模索し、迷い傷つきながら進む。最後には別れることになっても。そういうのが私は好き。だってなんかもうすごく人間っぽい!

 

もちろん社会の一員として生きている限り、周囲の人間の示す価値観の中で幸せを見つけるというやり方は真っ当だし、私だって理解できる。私は「恋愛」したしそれを「結婚」という契約で具現化させた。「恋愛」はやっぱりきらきらしてたし、「結婚」して数年経った今も幸せだ。「恋愛」自体を否定したいわけじゃない。ただ私が思うのは「恋」と「恋愛」が全く別のものだということ。

私は「恋」ほど破壊力のある感情を知らないし「恋愛」ほど面白いイベントはないと思う。ただ混同したらもったいないって気がするだけ。だって「恋愛」なら自分で体験すればいいじゃん。それが一番面白いよ。

物語にするのなら、物語を読むのなら、人間が人間たるゆえんの一つである「恋」を見つめようじゃないか。美しくて純粋で、醜くて穢れている、まるで人間そのものだもん。