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斜線のなかみ

春よ来い

もう1月も末だけど、お正月の話を。

2013年の大晦日は夫と二人で家でテレビを見て過ごした。結婚して初めての二人きりの年越しだった。頂き物のお酒たちをぐいぐい煽り紅白を見て騒いで過ごした。紅白が終わって番組がゆく年くる年に変わると夫は蕎麦を茹で始め、昼間デパ地下で買ったというかき揚げをのせて出してくれた。蕎麦をすすりながら、いざ年越しという段になって夫はいきなりテレビを消し、私が戸惑っている間に大滝詠一の「君は天然色」を爆音で流し始めた。彼に強い思い入れがあったわけではないけれど、音楽がきらきらして眩しくて、少し泣けた。

翌朝は張り切ってお雑煮を作った。私の作るお雑煮は自分の母方の祖母の味をイメージしている。祖母は青森出身なので、多分青森の味なのだろう。汁は醤油味、具は鶏肉と大根と人参。お餅を入れて、三つ葉を散らす。お餅は大抵市販の四角い切り餅で、トースターで焼いてお椀に入れてから汁を注ぐ、という作り方だった。しかし今の私の元には夫の母方の祖母手作りのお餅がある。義祖母は香川に暮らしていて、毎年お餅を手作りして送ってくれる。お餅の形は丸く、黒豆やあんこの入っているものもある。

そのお餅を見る度に私は結婚前の、婚約して初めて彼の実家で過ごした年末年始を思い出す。15人もの彼の親戚に囲まれ必死で明るく元気に振る舞っていたこと、夫が疲れた私を気遣って近所に散歩に連れ出してくれたこと、神戸の港から見る夜景の美しさ、元旦の朝思いつきで太陽の塔を見にいったこと。色々あるけれど、衝撃だったのは彼のお母さんが作ってくれたお雑煮だった。汁は白みそ、具は大根と人参。そこへ普通の餅とあんこ入りの餅どちらが良いか聞かれたのだ。私はその時、テレビかなにかでどこかの地方ではあんこ餅を入れたお雑煮を食べると聞いたことがあったのを思い出し、そこが義母となる人の実家なのだと気付いた。私は興奮してもちろんあんこ餅を選び、全国都道府県で唯一の味を堪能した。そのお餅は丸くて、焼かずに汁の中で柔らかくしたものだった。

私は北海道出身だけど、青森の味のお雑煮を作り、香川のお餅をレンジで温めて入れる。さすがにあんこ餅は使わないけれど。(白みその汁とは相性が良いけど醤油味ではどうだろう?)なんだかそういうことに、家の繋がりを感じて「ああ結婚したんだなあ」と実感する。家庭の味は母から娘へ伝わってゆくものなのだということも改めて。そしてこんな風に微妙に家同士の味がミックスされた料理が出来ていくのだなと。私のような考えすぎでひねくれた人間がドラマで見たような普通の家庭に馴染んでこういうことを思ったりするのは、ちょっと不思議。でも悪い気はしない。