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斜線のなかみ

小さな火とアルコール

 手足の感覚が無くなりそうなほど冷えきった体で、俺はウィスキーを煽った。それは一瞬だけ喉を灼き、尾を引きながら胃の腑へと落ちてゆく。香りつきの息を吐き出し酒瓶をコートのポケットに納めると今度は煙草に火をつける。マッチを擦るとその時だけ辺りが照らされる。ゴツゴツした岩壁とにょきにょき生える透明な鉱物。暗闇にはとっくに慣れたし石を美しいと思う感性は俺にはない。煙草の煙を吐き出し、酩酊しながらだらだらと俺は歩く。足をひきづり、転倒して血を流すこともある。温もりはごく小さな火とアルコールのみだ。時々自分の呼吸の音や心音がたまらなく嫌になることがある。どこまでも反響し、いつまでも聞こえ続ける。俺が死なない限り。俺は伸び放題でうざったい髪を無造作にかきあげて、ひとつ口笛を吹いた。その音はどこまでも反響し、広がり、変形し、まるでいつか出会った女の声のように聞こえた。

  

即興小説トレーニング3つ目。お題は「俺の終身刑」制限時間15分。修正無し。